PROJECT

プロジェクトストーリー

01.Solution Planning

日本酒ブランドを守るために、
当社初のRFID技術を使った管理システムに挑む—
黒龍酒造「日本酒流通経路管理システム」

01.Solution Planning

PROJECT MEMBER

俵 克也

営業1部営業3課
2004年入社

入社後から酒造メーカー中心の営業に従事。円滑なコミュニケーションでクライアントとの信頼関係を築いてきた。

神谷 ひな

営業1部営業3課
2021年入社

RFID技術を導入するアパレル業界にてアルバイトを経験。当時の知識を持って今回はインタビュアーに挑戦。

三納 哲也

商品開発部
1984年入社

ソリューションプランナーとして、RFID技術を中心に酒造業界のお困りごと・実現したいことへの新たな提案に取り組む。

印刷会社が挑戦する「自動認識技術」

神谷「タカクワ=日本酒ラベル」のイメージが強かったので、RFIDタグを利用したシステムを導入したと聞き驚いたのを覚えています。私が入社する前年のことです。

俵 そうですね、会社としても初めての取り組みでした。

神谷そもそもどのような経緯で、印刷会社である当社がRFIDタグのご提案をすることになったのでしょうか?

俵 私が黒龍酒造様の営業担当となったのが2017年でした。以前からラベルやパッケージなど、包材の大半を当社に任せていただいており、訪問時の情報交換をはじめ、信頼関係を築く日々だったと思います。最近では全商品のラベルリニューアルもお任せいただきました。

三納当時ちょうど「ICタグを利用したセルフレジ」の動きが世間で増えてきたときで。私自身RFIDをはじめとしたデジタル化に興味を持っていたのと同時に、お客様からもRFIDを使った在庫管理についてお問い合わせいただくことが増えていました。自動認識ソリューションで信頼の高い株式会社サトー様と業務提携を行い、会社として本格的に挑戦することにしたのです。

俵 三納さんと、日本酒業界でもデジタルを活用するにはどんな動きがあるか?という話もしましたね。黒龍酒造様は、当社で開発した新技術や他社事例などにも熱心に耳を傾けてくださるので、RFIDなどの自動認識の話も興味を持たれるかもしれないと考えました。デジタル化という考え方からもサポートできればと。そこから三納さんと共に伺いました。2018年のことです。

神谷お話を受けてのリアクションはどうだったのですか?

三納初回から興味を持っていただけました。もともと正規流通品と比べて適切な品質管理がされない非正規流通品について課題を持っておられた。

俵 本来は特約店のみで販売しているものが、転売などによって別の場所で販売されてしまう。冷蔵庫に入れるべき商品が常温で保管されていたら、本来の味から変わってしまいます。商品1本から流通経路を特定できるようにしたら、転売を抑止して市場から排除することにつながります。適切な品質管理をする特約店のみで販売をし、本来のおいしさを提供することが、結果として「黒龍酒造」のブランドを守ることになると、先方も強く感じているようでした。

三納自動認識技術を使って、流通経路管理の方法を模索することとなりました。商品1本1本にRFIDタグを付けるという案もあったのですが、コスト面をはじめ読み取り精度にも懸念があったため、それ以外の方法を考える必要がありました。

※RFIDとは、電波を用いてICタグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術の一つ。複数タグの一括読み取りが可能で、さまざまな業界で導入が進んでいる。

「黒龍 純吟」
「黒龍 いっちょらい」いずれも当社製のラベル
王冠キャップの天面に印字される二次元コード
ロボットによるタグの自動貼付け
パレット上の箱にあるRFIDタグを一括読み取り

前例のない課題に「ワンチーム」で挑む

俵 はじめはRFIDタグではなく、二次元コードだけでの実行案もありましたね。

三納ただ、実際に使用いただく卸会社の方から、出荷の際に1箱ずつコードを読み取るのは作業時間や効率を考えても難しいと。卸会社で出荷情報の登録ができないと、流通経路を追うのは限りなく不可能。一括読み取りができるRFIDタグの実現を目指すこととなりました。

神谷いまさらですが、RFIDタグは水の影響を受けると、読み取りづらくなると聞いています。どのように克服したのですか?

俵 当社にて独自の検証実験を行いました。水物の影響を受けないようにRFIDを下げ札にしたり、酒瓶を詰めた外装箱に付けたりして、読み取りができるかを検証。出荷時と同じようにパレットに箱を積み上げた状態で読み取ります。

三納酒瓶にRFIDの下げ札を付けたものは、密集した状態でそれぞれ読み取ることが難しく、読み取り率が低かった。結果、読み取り率が100%となった「外装箱にタグを1枚付ける案」を採用。中に入る酒瓶にはそれぞれに二次元コードを付けて、どの箱にどの商品があるのか紐づけて管理をするということです。

俵 実用実績がほぼないので、慎重に進めていきましたね。関わる全員で考え、議論しながら決めていきました。

三納個品情報を登録した二次元コードを王冠キャップの天面にレーザーマーカーで印字するアイディアも、その中で決まりました。おかげで、外装箱に詰める前の外観検査による抜き取りにも対応できるようになりました。箱に詰めた後に、製造ライン上で天面にある二次元コードを一括読み取りして、それらと紐づけになったRFIDタグシールを発行し、ロボットが箱に自動貼り付けする。導入前と比べても作業量を増やすことなく完了できます。

神谷「外観検査による抜き取り」が酒造メーカーらしいですね。今回のシステムのポイントと伺いました。

三納初回の訪問から2年をかけて、システムを納品できました。黒龍酒造様やサトー様、機械メーカーなど関わったすべての企業が「ワンチーム」となって進めたからこその賜物だと思います。

神谷納品後の反応はいかがでしたか?

三納正直、最初はトラブルの嵐でした。例えばそのうちの一つが、外装箱に貼ったRFIDタグが剥がれ落ちてしまうことでした。段ボールだと問題ないのですが、プラスチック搬送用箱で問題が発生しました。

俵 レンタルの箱なので、回収時に洗浄する。だから最近のものはシールが剥がれやすいように、表面に凹凸の加工が施されています。社内実験の際に使用したのが加工のないものだったので、まさかと思いました。

三納また、正式に量産開始後すぐに、品質管理のために入れた冷蔵倉庫内でRFIDタグがほとんど落ちていたともお聞きしました。外気との湿度差での反りが主な原因と判明し、半年くらいかけてさまざまなトライを重ね、最終的には耐水性が高く湿度の影響を受けにくい合成紙を採用しました。日本酒だからこそ発生した課題でしたが、それを乗り超えてからは無事に運用されています。

おいしい日本酒を一人でも多くの方に飲んでもらいたい

神谷さまざまな課題をクリアしたからこそ、日本酒分野国内初の運用につながったのですね。当社としても初めての取り組みとして、大きな一歩になったのではないでしょうか。

俵 従来は「濡れても剥がれない」などの機能性や、デザイン性の高いラベルを作ることが当社の強みだったと思いますが、これからはRFIDや環境負荷軽減など多角的な提案が必要です。その面でも強みが一つ加わったのではないかと。2年間のやりとりの中で、私自身学びを深めることができました。

三納黒龍酒造様にとってより良い結果になることを目指して必死に取り組みました。そして、一人でも多くの方においしい日本酒を味わってもらうことも目指しました。

俵 「せっかく買っていただいた方に、味の面で残念な思いだけはしてほしくない」と担当者様がおっしゃっていましたね。

三納本プロジェクトの原点の思いとして、よく思い返した言葉です。酒造メーカーとの取引が多い当社だからこそできることがあると考え、連携してシステム作りに勤しみました。気持ちとしては、黒龍酒造様の社員の一員として取り組んだというか。

神谷誠心誠意向き合って取り組まれたのですね。

俵 私たちは酒造メーカーさんが持つこだわりを多少なりとも理解していると自負しています。黒龍酒造様に寄り添って、共に良い未来を目指しました。

神谷今後の展望はありますか?

俵 最近だと化粧箱入りの商品にも同様の管理方法を展開しました。現在順次切り替え中なのですが、ほぼ全ての商品が対応できるということです。最終的には全商品の流通管理ができることを目指しています。

三納さらなる未来としては、在庫管理や品質管理をはじめ、消費者向けサービスにも展開できればと考えています。もちろん黒龍酒造様のご意向が一番なのですが、コスト面などの問題をクリアにしてからまたご提案していきたいです。

化粧箱入りの商品「黒龍 大吟醸」

想いを引き出し、寄り添い、信頼を得ること

神谷お客様に寄り添って、「印刷」以外の新しい分野でも挑戦する姿勢、私も今後目指していきたいところです!改めて、仕事をする上でのやりがいは何でしょうか?

俵 私が重視するのは「話を聞くこと」。お客様がどんな課題を持っているか、どんな未来を描いているかをしっかり聞き、想いを引き出したうえで資材のご提案をする。提案したものや成果物に満足いただけたり、商品の売れ行きが良かったりすると嬉しくなりますね。

三納喜んでいただけると嬉しいですよね。今回のことでいうと、担当者様から「うちの社員よりも、うちの会社のことを考えてくれているね」と言われて、信頼いただけたなと思いました。

神谷私は今年営業に配属となったばかりで、担当のお客様と信頼関係を築いている最中です。取引内容の打合せはもちろんですが、もっといろいろなお話をして、俵さんのように何か引き出せるようになりたいです。信頼いただくことの難しさを実感しています。

俵 これから少しずつ神谷さんらしい営業の姿をつくって、お客様といい関係が築けるといいですね。もう一つ、やりがいと言いますか、いろいろな商品に携われることも魅力だと感じています。毎回新鮮な気持ちで納品まで動くことができるので。

三納お客様ごとにご要望は違いますものね。こちらで成功したことを、別の仕事でも同じ方法で成功できるわけではない。それぞれにしっかりと応えていく楽しさは感じます。それらがお客様の売れ行きや業務効率化につながり、日本酒業界自体がより良くなる力となれば、すごいやりがいだなと思う。

神谷さまざまなご要望に応えるために、お酒はもちろんですが、もっといろいろなことに興味を持つことも大切ですね。そこから何かにつながるかもしれない。俵さんや三納さんをはじめ、先輩方の良いところを吸収しながら、学びを深めて頑張りたいと思います!本日は貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。