PROJECT
プロジェクトストーリー
プロジェクトストーリー
加藤 耕平
リレーションデザイン部
第2パートナーグループ
2016年入社
出版会社勤務を経て、入社。大のお酒好きとして「唎酒師」の資格を持ち、全国の日本酒情報を網羅するプランナー兼ディレクター。
西俣 勇紀
福岡営業所
2019年入社
出身地の宮崎県にて他業種の営業として勤務後、当社へ入社。本社勤務を経て、現在は九州全域担当の酒類営業となり、日々奔走している。
真の想いを引き出し、構想を広げる
加藤創業100周年という記念の節目に携わらせていただいた五町田酒造様。個人的に酒質や味わいがすごく好みで、実は以前から「いつかお仕事できれば」と切望していた蔵元さんでした。
西俣五町田酒造様の日本酒「 東一 」は、佐賀県内ではもちろん、全国的にも味の評価が高いですよね。佐賀では、同業者からの評価も高いです。現在使われているラベルも、もともと当社がデザインから制作したもので、評価いただいていました。
加藤でも「当社にはもっとできることがあるはず」と思い、ずっと五町田酒造様に行きたかった。西俣さんにも話していましたね。
西俣そうでしたね。私が担当営業になる前、まだ記念酒の話が出ていないときにも伺ったことがあると聞いています。
加藤以前ブランディングという切り口でご提案に伺ったことがありました。100周年をきっかけに改めてブランドの価値を考えるという話をしてから約1年後に、今回の記念酒企画のコンペ参加につながりました。切望していた機会だったので、改めて五町田酒造様について調べ、何をやっている会社で、どこに向かっているのかを、ある程度把握した状態で臨みました。
西俣私自身コンペに苦手意識を持ってしまう節があるのですが、加藤さんは強い。ヒアリングを特に大切にしているんですよね。
加藤基本的な「誰に・何を・どのように」という点は絶対に押さえなければいけないと考えています。今回も、蔵の歴史や、なぜ今「東一」が「東一」であるのかということを、根堀り葉掘り聞き出しました。五町田酒造様が記念酒について真に目指すことを共有できたのが本当によかった。
西俣今回の記念酒は、蔵人が育て35%まで丹念に自家精米した山田錦と、日本醸造協会で昭和43年に凍結保存されていた協会9号酵母を使用し、これまでの酒造りの集大成として醸造されました。五町田酒造様は「YK35※の再現」と表現されていましたが、それを通して昔からの東一ファンに感謝を伝えたいというのが今回の真のテーマだった。
加藤YK35は良い酒が出来て、新酒鑑評会でも金賞を取れると言われていた時代があり、五町田酒造様もそれで造っていた時代がありまして。今の東一はきれいな酒質ですが、YK35で仕込むことで、良い意味で「無骨さ」を少し出したいと考えているようでした。「それがうちらしい」と。味の想像ができたのも、企画やデザインの方向性を考えるヒントになりました。
西俣今でこそ山田錦は全国各地で栽培されていますが、昔は入手すら難しかった。五町田酒造様はその時期から自社で栽培されたんですよね。試行錯誤を繰り返しながら栽培し、現在の東一ブランドの基軸とされた。「YK35の再現」には、100年にわたり革新を重ねながら米作り・酒造りに真摯に取り組んでこられた五町田酒造様の姿勢が表されていると感じます。
※35%まで精米した酒米・山田錦(Y)と協会9号酵母(K)を使った酒造りのこと
五町田酒造らしさを追求した表現へ
西俣デザイン採用の結果をもらったときは、本当にうれしかったのを覚えています。当社のデザインに「五町田酒造らしさ」を感じていただけたことや、根堀り葉掘り聞き出す“前のめり”な姿勢をはじめ、プレゼン時も「五町田酒造」のことを考えてくれていると思えたことが採用につながったそうです。提案の一番のポイントは、やっぱり「髭文字」でした?
加藤そうですね。お店でよく見る「東一」は筆文字のシンプルな書体なのですが、佐賀県内向けの一部商品や昔のラベルには「髭文字」が使われていることを知りました。こんなに素晴らしいものをなぜ使わないかって、「読めないかも」と思われているからだそうで。でも、今回は100周年の記念ですし、そこには五町田酒造様の「歴史」は欠かせないキーワードになります。髭文字を使うことで、昔からのストーリーを語れると思いました。社長に使用を打診すると「なしではないね」と返事をいただいたので、やってもいいなと。
西俣デザイナーさんも髭文字でインスピレーションを感じたと話していました。髭文字の存在が伝統と格式の高さを表現していますね。
加藤長く続いてきた歴史を感じさせたかったんです。また、ロゴの右上にある丸五のマークもポイントです。
西俣船の錨っぽい。これも今の「東一」には使われてないものです。
加藤髭文字と同じく、昔のラベルには入っていました。お酒を運ぶのに船を使ったとか、船関係の業者と関わりがあったとか、明確な理由までは辿り着かなかったのですが、オールドファンはうれしいだろうなと。絶対使いたいと思いました。
西俣初回提案の際に、五町田酒造様から「変わった要素を追加したい」というご相談がありました。そのとき反応が良かったのが、ホログラムの箔でした。伝統と格式の高さを表現する髭文字が、一気にモダンになった。
加藤すごくいい変化だったなと思いました。製作途中では少しクラシカルなイメージに落ち着き始めていたので、次の100年に向けて挑戦していく姿を表現するモダンな要素がほしくて。ホログラム箔を使用することで、一気に「伝統」と「モダン」を違和感なく1枚のラベルに落とし込むことができました。
西俣五町田酒造様の社長は、お米の育成やお酒の製法にとても情熱を持たれているお方で。そのこだわりが、ラベルにある稲穂のイラストにも表れていますよね。社長直筆のイラストを使いました。
加藤パッケージにもお米へのこだわりを表現したく、米粒パターンを入れ込んでいます。デザイナーとも話して全体的にパターンを入れました。遠目で見るとわからないのですが、近くで手に取ると米粒とわかり、それが五町田酒造様の奥ゆかしさを表していると思います。
それぞれに込めた「感謝」と「決意」
西俣納品したラベルが貼られた記念酒は、地酒専門店で並びました。五町田酒造様にも喜んでいただけましたし、どこからでも目立つ「ホログラム箔」と「髭文字」の組み合わせが異彩を放つことから、特に地酒専門店の方々からの評判がよかったそうです。
加藤それはうれしい反応ですね。このラベルとパッケージは第50回石川県デザイン展コミュニケーションデザイン部門にて、石川県洋紙会会長賞を受賞することができました。この賞はもちろん、私たち制作チームだけではなく、ホログラム箔など新たな視点をくださった五町田酒造様と一緒に作り上げることができたから受賞できたと思っています。やっていて楽しい仕事でした。
西俣お客様が目指すゴールに向けて一緒に築き上げていくのは良いですよね。一緒に制作したリーフレットも高評価でした。
加藤リーフレットには五町田酒造様の「歴史」や「米から育てる酒造り」の姿勢を盛り込みました。佐賀県で初めて酒米「山田錦」の栽培に挑戦したこと、試行錯誤しながら酒造りの技を磨き続けたことなど、歴史や想いを伝えたかったんです。それらをラベルやパッケージ、ツールを通してできるだけ表現し、多くの人に改めて知ってほしいと思いました。
西俣特に評判が良い表紙の写真には「米作りへのこだわり」が表現されているんですね。
加藤ラベルやパッケージ、ツールにそれぞれに込めた想いはありますが、今回の場合、五町田酒造様が考えていたゴールが「YK35を使って、100周年の感謝を伝えること」でした。私たちが提案したのは「感謝だけではなく、次世代に向けて決意を伝えること」。スーパーだけではなく、地酒専門店にも置かれるせっかくの機会なので、次の100年に向けての「決意」も伝えた方が、買う方も納得できると思いました。消費者の視点で見ると、これからの期待値があると、次に何が出るか楽しみになりますよね。周年企画の一式のツールを通して、それが伝えられたならいいなと思います。
「考え合える」関係性を目指して
加藤酒蔵さんをはじめとしたお客様と、当社のような業者は、相対する感じになりがちですが、私のようなプランナーはあくまでもお客様側。消費者に対して、「このお酒を売るためにはどうしたらいいか?」を一緒に考えます。
西俣そうですね、パートナーと言っていただくお客様もいらっしゃいますので、誠意を持って対応していきたいです。
加藤西俣さんは対応力が抜群で、お客様との関係の作り方がうまい。お客様から個人的に贈り物をいただいたり、ご飯を奢っていただくこともあるよね(笑)。それくらいフランクな関係性もいいと思う。私もお客様に気軽に相談してもらえるようにスキルを磨いていきたいです。意見を出し合ったり、がっつりと企画させていただいたりと、「タカクワに席がある、お客様の外部企画室」だと思っていただきたいですね。
西俣そんなこともありましたね(笑)。私はお客様を深く理解できる営業になりたいです。例えばデザイン会社との取引がありながら、なぜ当社にデザイン依頼をされたのか?など、当社にご依頼いただく際の真のニーズをしっかり理解できるようになりたい。お客様と良い関係性を築いていきたいですね。
加藤当社の業務の大半は、自分一人だけでは進められません。ですから、共に高め合える仲間がいると心強い。西俣さんはどんな人と共に働きたいですか?
西俣間違いを恐れずどんどん意見を出す人が好きです。さまざまな視点からの意見が出ることで、新しい可能性が広がるのではという期待も込めています。加藤さんはいかがですか?
加藤「楽しめる人」かな。楽しいことを楽しめるのは当然ですが、課題や難しいことに直面したときに、それをどう対処・解決するか考えることも楽しめる人と一緒に仕事がしたいですね。
西俣当社の仕事は「0から1を生み出す楽しさ」があると実感しています。特に営業はいろいろな風土や景色と出会い、多くのお客様と対話を重ねられます。そういった出会いを通して生み出される「楽しさ」は唯一無二だと思います。
高桑美術印刷株式会社 採用情報